支援者のみなさま、いつも本当にありがとうございます。地球防衛群です。
岡山県鏡野町で、かつて進められていた風力発電計画について、地域で向き合ってこられた方にお話を伺ってきました。
今回、現地で強く感じたのは、これは単純な「再生可能エネルギーに反対する」という話ではない、ということです。
再生可能エネルギーは、これからの社会にとって大切な選択肢のひとつです。
ただ、そのために山を大きく切り開いたり、水源の森や生きもののすみか、地域の暮らしに影響が出る可能性があるなら、光の部分だけでなく、影の部分もきちんと見なければならない。
そんな大切な問いを、現地で受け取ってきました。
そして、今回お話を伺って特に心に残ったのは、地域の方々がその問いを抱えたまま終わらせず、実際に行動し、計画を立ち止まらせるところまでつなげてこられたということです。
大きな開発計画を前にして、個人の声は小さく見えてしまうことがあります。
それでも、資料を読み、学び、周りに伝え、専門家にも相談しながら、地域の方々が少しずつ声を重ねていった。
その積み重ねが、「このまま進めてよいのか」を社会に問い返す力になったのだと感じました。
お話を伺った場所では、地域の方が手描きの資料や説明用のチラシを見せてくださいました。
そこには、風車そのものだけでなく、山に入る管理道路、木を切ることによる保水力の低下、土砂災害への不安、騒音や低周波、野鳥や動物への影響など、暮らしの中から出てきたたくさんの心配ごとが描かれていました。
一枚の紙に、山、水、家、動物、人の体調、そして未来への不安が一緒に描かれている。
その資料を見たとき、「これは単なる設備計画の話ではなく、地域の暮らし全体の話なのだ」と感じました。
■ 地域の方が求めていたのは「判断できるだけの情報」
お話を伺う中で何度も出てきたのは、
「本当にこの場所で、この形で進めてよいのか」
という問いでした。
説明は十分だったのか。
住民の方々は、いつ、どのように計画を知ったのか。
山に道路を入れることで、水の流れや土砂災害のリスクはどう変わるのか。
風車の運用が終わった後、山に残るものは誰が責任を持つのか。
そうしたことを、地域の方々が納得できる形で知り、考え、判断できる状態が必要なのだと感じました。
たとえば、山の上に大きな設備を建てるためには、資材を運ぶ道が必要になります。
その道をつくるために木を切り、斜面を削ることになれば、雨が降ったときの水の流れはどう変わるのか。
これまで山が受け止めてくれていた水は、どこへ流れるのか。
下流に暮らす人たちの水や、田畑、川、海にはどんな影響があり得るのか。
また、風車が近くに建った場合、音や低周波をどう感じるのか、眠りや体調への不安はないのか。
野鳥や動物たちの通り道、山の生態系はどう変わるのか。
地域の方々が話してくださったのは、そうした一つひとつの「暮らしに近い問い」でした。
大きな計画ほど、説明資料の中では数字や専門用語になってしまいがちです。
でも、現地で聞こえてきたのは、
「この山が変わったら、自分たちの暮らしはどうなるのか」
という、とても切実で、当たり前の問いでした。
そして鏡野町では、その問いを一人ひとりの胸の中だけにしまわず、地域の声として外に出していったことで、実際に開発を止めるところまで動かしてこられたと伺いました。
これは、とても大きなことだと思います。
「もう決まってしまったことだから仕方がない」
「自分たちが声を上げても変わらない」
そう思わされてしまう場面は、全国の地域にあると思います。
でも、鏡野町の方々の歩みは、地域の人たちが学び、つながり、声を届けることで、未来を変えられる可能性があることを示していました。
■ 自然を守ることと、エネルギーを考えることは対立しない
私たちは、自然を守ることと、社会に必要なエネルギーを考えることは、本来、対立するものではないと思っています。
大切なのは、「どこで」「どの規模で」「どんな合意のもとで」進めるのか。
そして、その場所にある水、森、生きもの、暮らしの声を、きちんと聞けているのか。
鏡野町でのお話は、そのことを改めて考えさせてくれる時間でした。
再生可能エネルギーという言葉には、明るい響きがあります。
もちろん、化石燃料に頼りすぎない社会をつくることは大切です。
けれども、「再生可能」という言葉だけで、どんな開発でもよいことにはなりません。
水源の森を大きく削る開発なのか。
地域の人たちが十分に理解し、納得した上で進められているのか。
事業が終わった後の撤去や管理まで見通されているのか。
その確認を飛ばしてしまえば、せっかく未来のために選んだはずのエネルギーが、別の未来を傷つけてしまう可能性があります。
だからこそ、私たちは「再エネか、自然保護か」という二択ではなく、
「自然も、暮らしも、未来のエネルギーも、どうすれば矛盾なく守れるのか」
という問いを大切にしたいと思っています。
■ 地域の声が届きにくいこともある
もうひとつ印象に残ったのは、地域の中で声を上げることの難しさです。
小さな集落では、誰かがはっきり意見を言うだけでも、人間関係への影響を心配しなければならないことがあります。
「本当は不安だけれど、なかなか言い出せない」
「詳しい資料を見ても、専門的で分かりにくい」
「気づいたときには、もう話が進んでいるように感じる」
そんな空気があると、本当に不安に思っている人の声が、外からは見えにくくなってしまいます。
だからこそ、外から訪ねて話を聞くこと、資料を一緒に読み解くこと、分かりやすい言葉で発信することにも意味があるのだと感じました。
地域の中だけでは声にしづらいことも、外から関心を寄せる人がいることで、少し話しやすくなることがあります。
今回の鏡野町のお話は、「地域の声を孤立させないこと」の大切さも教えてくれました。
■ 誰かを責めるためではなく、未来のために記録する
地球防衛群が大切にしたいのは、誰かを攻撃することではありません。
現場で何が起きているのか。
地域の方が何に不安を感じ、何を守りたいと思っているのか。
そして、七世代先の子どもたちに、どんな山と水を手渡したいのか。
その声を丁寧に聞き、記録し、必要な人に届く形で発信していくことです。
今回伺ったお話をもとに、今後も「適切な開発とは何か」「地域と自然を守るために、どんな仕組みが必要なのか」を考え続けていきます。
鏡野町で見せていただいた手描きの資料には、風車の絵だけでなく、揺れる家、山から流れる水、眠れない人、逃げ場のない動物たちが描かれていました。
それは専門家の論文ではありません。
でも、そこには、地域の方が自分たちの言葉で、自分たちの不安を伝えようとした跡がありました。
こうした声を、感情論として片づけるのではなく、地域の未来を考えるための大切な材料として受け止めたいと思います。
そして、その声が実際に開発を止める力になったことは、同じように水源の森や地域の暮らしを守りたいと願う方々にとって、大きな希望になるはずです。
水源の森を守ることは、そこに暮らす人だけの問題ではありません。
下流の川へ、海へ、そして未来の命へとつながっていく、大切なテーマです。
今回のインタビューの詳しいまとめは、財団Webサイトにて公開させていただく予定です。
記事では、地域の方が計画を知ったときのこと、説明会で感じたこと、録音や文字起こし、情報公開請求、専門家とのつながり、そして事業終了後の責任という論点まで、もう少し詳しく整理しています。
財団Webサイトの公開につきましては、当初の予定より少し遅れており、お待ちいただいている皆さまには申し訳ありません。
現在、活動内容や資料をきちんとお届けできる形に整えておりますので、公開まで今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
引き続き、地球防衛群の活動を温かく見守っていただけたら嬉しいです。
地球防衛群
小野