上海大会を終えて。庭師として感じたこと、これからの恩送り
「造園日本代表2名を上海へ!過去出場選手の庭師が繋ぐ恩送りプロジェクト」を応援いただき、本当にありがとうございました。
上海で開催された第48回技能五輪国際大会に、造園職種の日本代表として出場した門野史奈選手と西川寛昭選手は、標準点以上に達した選手に贈られる「敢闘賞」を受賞しました。
本大会を終え、これまでの日々とこれからを見つめる中で、今回のプロジェクトを立ち上げた原点に立ち返っております。

今回の技能五輪国際大会で感じたこと
私も技能五輪国際大会の会場を訪れました。
私が出場したロシア大会から7年経った今でも学ぶことの多い現場でした。
基礎や基本の技術は、参加者全員が身につけていることが前提となります。
そんな中、私が改めて感じたのは、美しい庭を作るうえで、技術だけでなく、選手一人ひとりの人格や感性が作品に表れるということでした。
少し抽象的で感覚的な表現になりますが、作品から滲み出る美しさは、手順通りミスなく施工したからといって生まれるものではありません。
どんな人物がその石に触れたのか、どんな想いを込めてその作業を仕上げたのか、そうした部分にこそ美が宿るのだと感じます。
審査が公平で課題も均一であるからこそ、そうした違いが如実に表れます。
技術の訓練と同時に、美しさを感じる心や人を思いやる心といった、一見施工には直接関係がないように思える要素、あるいは幼少期から養ってきた感覚のようなものが、作品の差となって現れるのかもしれません。
大会では、競技者は、庭師として施主様にどんな庭を提供したいのかを、常に問われています。
そんな緊迫した状況でも慌てることなく、冷静に、今この瞬間、自分がなぜここに立っているのかを理解し、周囲の応援の力を作品に乗せている。
そのように感じられる選手を、数名見かけました。
そうした選手は、会場でもひときわ目を引きます。
なぜなら、一つの所作や後ろ姿に、キラッと輝く何かが見えるからです。
そうした選手の人格というより、にじみ出る人間性のようなものが、最も重要だと感じました。

大会を終えた2人のこれから
門野選手と西川選手は、世界最高峰の施工競技大会を終えたとはいえ、庭師として、まだここは通過点です。
それは、私にとっても同じです。
2人はまだ20歳前後です。これからもっとたくさんの現場を経験し、施主様の願いを叶える中で、予算や材料、地域風土、自らの人間的な未熟さなど、もっと難しい課題に直面します。これからが本当の本番です。
そのたびに考え、内省し、新たな自分に出会う。
そうした経験を重ねる中で、想像もしていなかった良い庭を、気づかないうちに自分の手で創り上げているのだと思います。
選手2人なら、競技大会で培った反骨精神と全ての経験を糧に、どんな困難も乗り越えられると信じています。

これからの恩送りプロジェクト
恩を感じ、恩に報いて、恩を送る。
私自身、2019年の技能五輪国際大会に挑んだ際、指導者や事業所、家族をはじめ、たくさんの方々に支えられました。
一人の若い庭師が世界の舞台に立つために、どれほど多くの支えが必要なのかを身をもって知っています。
そのご恩を自分の中にとどめるのではなく、次の世代へ送りたい。
そう考え、今回のプロジェクトを立ち上げ、門野史奈選手、西川寛昭選手、そして2人を育ててきた今田社長と今田作庭園を応援させていただきました。
大会は終わりましたが、恩送りはここで終わりません。
これからも若い庭師たちが技と心を磨き、世界へ挑戦できるよう、私自身ができることを続けていきたいと思います。
今回のプロジェクトでは、想像を超える皆様の温かい応援をいただき、時に「どう皆様にお礼を伝えたらよいのか」と戸惑う日もありました。
だからこそ、これから私や今回の選手が、庭師としてどのように生きていくのか、その姿勢、生き様を通じてプロジェクトの思いを体現していきたいと、力強く感じております。
恩送りプロジェクトとしてこれからも続けていきたいのは、庭師としてどんな庭を届けたいのか。
自分がなぜその場に立っているのかを理解し、支えてくださる方々の応援も作品にのせられる。
そんな、選手の「心」を育てることです。
そんな光り輝く選手の「心」を持った庭師が日本から次々に生まれると信じて、恩送りを続けていきたいです。

これまで支えてくださった皆様へ
そして改めて、今日、私が庭師として立っていられること、WorldSkillsという大会にご縁をいただき、この大会で鍛えていただいたことに感謝いたします。
事業所の近江庭園様、寺下会長、磯城野高校の若林先生、相方の宇都宮、エキスパートの今田社長をはじめ、大会出場に至るまで当時の私を支えてくださった全ての皆様に感謝しております。
皆様からいただいたご恩を、今度は私自身が次の世代へ送っていきたいと思います。
日々の庭仕事の中で心を磨き、技を磨き、施主様と共に良い庭を作れるように、精進してまいります。
終わりに
今回のクラウドファンディングでは、選手2名の訓練環境の整備や特殊工具、遠征などを支えるために、皆様からご支援をいただきました。
大会や訓練で使用する特殊な工具等については、次回以降の選手にも引き継いでいく方針です。
支援金の使途の詳細についても、確認できた内容を活動報告を通じてご報告いたします。
皆様のご支援は、今回の2名で終わらず、2028年の愛知大会、そしてその先の日本代表へと受け継がれていきます。
長期間にわたり、何度もお知らせをご覧になり、関心を寄せてくださり、ありがとうございました。
皆様と繋がれた心の絆は、これからもプロジェクトメンバー一同の心にあります。
2028年、愛知大会の会場でまたお会いしましょう。
石坂暢琢