みなさま、こんにちは。プカタンクル(キャッサバの土、の意味)です!
8月末、クラウドファンディングで皆さまに応援いただいたカヤポ先住民族の森林再生プロジェクトの現場を訪れてきました。普段暮らすリオデジャネイロから飛行機を2回乗り継ぎ、さらに車で10時間以上。簡単な道のりではありませんが、「またあの場所に行ける」と思うだけで心が安らぐほど、私はこの土地と人々が大好きです。
今回は、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンのスタッフも日本からブラジルを訪れ、一緒に現地を視察しました。実際に森を歩き、村の人たちと話す中で見えてきたプロジェクトの今をご報告します。
森に植えた苗木、約90%が定着
まずうれしかったのは、これまで森に植えた苗木の約90%が定着していたことです。一般的な定着率が70%とされる中、かなり高い定着率です。現場で大切にしているのが、苗木の周りを枯葉で覆い、土壌の乾燥を防ぐ「マルチング」。一つひとつの苗木に、丁寧に施されています。技術者がその手法と役割を説明したところ、カヤポの人たちは「赤ちゃんとベッドみたいなものだね!」と理解し、それ以来、cama(ベッド) と呼んでいるそうです。
森を歩くと、本当に小さな苗木が一つひとつ、枯葉の「ベッド」に包まれていました。その姿を見ると、一本一本を大事に育てていることが伝わってきます。

Cama(ベッド)を丁寧に整えるカヤポの男性
前回の報告でご紹介した苗床では、これまで約7,000本の苗木が育てられ、一部はすでに森へ植栽されています。事業で設置したソーラーパネルを活用した簡易灌漑設備も機能しており、厳しい乾季のなかでも、苗床には青々とした苗木が並んでいました。
私自身、これまでアマゾン各地でさまざまな苗床を見てきましたが、ここまで丁寧に管理され、多様な在来種が育てられている苗床は珍しく、正直、レベルの高さに驚きました!今回、新たにチューブ型の育苗容器も導入され、地面ではなく台の上で作業できるようになりました。作業する人の身体への負担を減らし、苗木を森へ運ぶ際にも扱いやすくするための改善です。

苗木が並ぶ苗床

カヤポ民族のプロジェクトメンバー、カウンターパートのinstituto Kabu スタッフ達、CIスタッフ達と。
一方で、苗木を育てるための「種」を集めるのも、実は大仕事だと村の人が教えてくれました。村の近くでは森林の劣化が進み、十分な種子を採取できる場所が少ないため、船で約2時間、さらに徒歩で約2時間かけて森の奥へ。家族で一日がかりで種を探し、集めることもあるそうです。
集めた種は選別し、洗い、乾燥させて、苗床で育てます。森林再生に必要な在来種の苗は、街に行けば簡単に買えるものではありません。最近では、カヤポの人たちが採取した在来種の種を、外部の人が「購入したい」と声をかけてくることも増え、一部を販売する人も出てきました。
森林再生に必要な種を集めることが、新たな現金収入にもつながっていく。地域の森を再生する仕組みの中に、こうした生計の機会が生まれていることも、とても意義のある変化だと感じました。

種採集の話をしてくれた男性。採集では、女性達も活躍します。

ジャトバの種。ジャトバは木材としても利用されますが、カヤポの人々はその実を、狩猟に出る際の食料として持ち歩くそうです。
森と「水」の変化を追う
このプロジェクトで、森林再生とともに大切にしているのが水資源の保全です。現在、水位や水質のモニタリングを進めています。計4回の調査を予定しており、今回の訪問時点で1回目が終了していました。pHや水中の酸素量などを測定し、採取した水は詳しい分析のために研究施設へ送ります。ただ、ここは最寄りの町に出るだけでも長時間かかる場所。採取した水は24時間以内に分析する必要があるため、時間内に配送拠点まで届けるだけでも一苦労です。
2024年、ブラジルでは高温と干ばつのなか、大規模な森林火災が発生しました。この地域でも、約14万ヘクタール(東京23区の約2.2倍)もの森林が焼失。村の人たちにとって大切な川——その水源近くの森も、火災の被害を受けました。
カヤポの人たちにとって、川は単なる「水資源」ではありません。魚をとり、飲み水を得て、水浴びをする。子どもたちが泳ぎ、家族で一緒に過ごす場所でもあります。小さくて甘い焼き芋を持って川へ行き、みんなで泳いだり、ピクニックのように過ごしたりするのも楽しみなのだそうです。
そもそもクベンコクレ村が現在の場所につくられた背景にも、水があります。人口が増え、より多くの食料と水が必要になったことから、大きな川の近くに村ごと移動したとのことです。そして、その大切な水を支えているのが森です。アマゾンの熱帯雨林は、根から吸い上げた水を大量に大気中へ放出し、それが雲となって雨を降らせます。こうした水の循環は「空飛ぶ川」と呼ばれ、南米の降雨の約半分に寄与しているとも言われています。
森にいると、森と水、動植物、そして人の暮らしがつながっていることを実感します。街で暮らしていると知識として理解していることも、森ではもっと直接的に、身体で感じられます。森を再生し、その先にある水を守る。このプロジェクトで森林と水の変化を一緒に追っている理由も、そこにあります。

昔は乾季でも、土を掘れば水が湧き出てきたというイガラペ(小川)。今では、乾季には完全に干上がってしまいます。「ここの水は、とても美味しいんだ」と話してくれました。

村に滞在中のお風呂タイムは、川!自然の中で暮らすと、人間もその一部なのだと実感します。
なぜ、文化を守ることが森を守ることなのか
今回も、カヤポの伝統的なボディペインティングをしてもらいました。使うのは、ジェニパポという果実と炭。炭も何でもいいわけではなく、厚い樹皮をもつ木からつくったものを使うそうです。クラウドファンディングのリターンで、ペインティングが施された雑貨が届いた方は、「あれか!」と思っていただけるかもしれません。
身体にスッと一本の線を入れるところから始まり、下書きもないまま、迷いなく見事な幾何学模様を描き上げていく。その感覚には、いつも脱帽します。描いてもらっている間は、不思議とこちらも厳かな気持ちになります。
カヤポの人々が暮らすのは、外部の人が自由に出入りできない森の奥。それでも、彼らは日常的に身体を美しく彩ります。村では、全身にペインティングを施し、手足に飾りをつけた小さな子どもたちをよく見かけます。母親が子どもの成長を願って描くのだそうです。
ジャブチ(リクガメ)、蝶、コブラ。森の生きものを表した模様もあり、女の子たちは幼い頃から描き方を練習します。祭りになれば、すべての村の人たちが全身をペインティングで覆います。興味深いのは、彼らは「タトゥー」にはしないこと。必要なペインティングは、その時々の状況や思いによって変わるからだと聞きました。
今回、そんな文化に触れながら、「ルーツ」という言葉について考えました。文化は、本当に「根」なのかもしれない。土地に根を張り、自分たちが何者なのかを形づくる。土地を失うことは、自分たちの一部を失うことにもつながる。だからこそ、彼らは森と土地を守るために戦う。
COP30でも、先住民族の人たちから「文化を守ることは、森林を守ること」という声を何度も聞きました。今回、その言葉の意味がすごく腹に落ちました。

下書きもないまま、迷いなく見事な伝統文様(grafismo)を描き上げていく。

ジェニパポの実
小さな苗木が森になるまで
皆さまからいただいたご支援は、カヤポの森で少しずつ根を張り始めています。一本の苗木が森の一部になるまでには、長い時間がかかります。その歩みを支えるためには、継続して変化を見守り、必要な取組を一つひとつ重ねていくことが大切です。私たちも、カヤポの人たちとともに一歩ずつ活動を進め、この取組をその先へつないでいけるよう、できることを重ねていきたいと思います。
あらためまして、ご支援いただいた皆さま、本当にありがとうございます。今後も、カヤポの人たちと森の変化を見守っていただけましたら幸いです。