豊かなまちづくり
誰もが主体的に過ごせる街へ。商店街の空き家改修で市民が集う拠点をつくろう。
みんなの応援コメント
FOR GOOD
プロジェクト実行者が支援金を全額受け取れるよう、支援者さまからのシステム利用料(220円+決済手数料5%)により運営しています。
2025/12/15 17:00
カリマチメンバーズ応援メッセージ 神谷さん
こんにちは、刈谷市で1-1 Architectsという建築設計事務所を営んでいる神谷です。今回の「スペースAquaリニューアルプロジェクト」では、名城大学の皆さんとともに設計を担当しています。
「財政健全度日本一」や「強いまち」として知られる刈谷市。大企業の存在によって税収も潤沢です。そのため市内では大規模な開発が次々と行われていますが、私はこの刈谷で小さな設計事務所を営む一人の建築家として、そうした大きな開発とは異なる視点で、日々何ができるかを考えながら街と関わっています。
ここでは、私が携わった3つのプロジェクトを通じて、その取り組みをご紹介します。
○愛知県刈谷市のチャレンジショップ「 YOHACO」

写真:植村崇史
まず一つ目は「YOHACO」というプロジェクトです。対象となったのは、40年ほど前に建設された産業振興センターの2階部分です。かつてレストランがあったものの、長らく空きスペースとなっていた場所を、市の商工課さんが出店支援ボックスとして活用することにしたプロジェクトです。商工課から運営を委託されたのは、NPO法人「まちづくりかりや」さんで、1-1Architectsと同じく刈谷市を拠点とするみどりや設計室さんによる設計チームがリノベーションすることになりました。
このプロジェクトの背景には、刈谷市の抱える課題があります。財政が豊かで大規模開発が進む刈谷では、駅周辺の家賃が高騰しています。不動産の価値が上がること自体は良いことである一方、個人で新たにお店を出したいという意欲ある人々が、出店できずに市外へ流出するような事象も起きています。街に活力を生むためや魅力的な街にするためには、まず刈谷市内で出店できるプレイヤーを増やす必要があると考えます。そこで、非常に安い家賃で出店できる「チャレンジボックス」を作ることがこのプロジェクトの狙いとなりました。


写真:植村崇史 写真:植村崇史
限られた予算の中で、対象敷地の100坪という広さをどう再生するか。私たちは、既存の大きく太い丸柱を邪魔者扱いするのではなく、それらを包括するようにすごく大きなベンチやテーブルを配置しました。あえて余白のある家具を作ることで、利用者が本を置いたり商品を陳列したりと、使い手が空間を作り込んでいけるような冗長性を持たせました。現在は、将来独立を目指すコーヒー店や、本来刈谷市でお店を持ちたい気持ちを持ちながら諦めれていた子供服店などが入居しています。さらに、ここで実績を積んで、商店街の空き物件を紹介してもらえるような出口戦略も構築し、街全体に小さな店舗を広げていく仕組みづくりを目指すプロジェクトです。
○愛知県刈谷市のセレクトショップ「polne」

写真:植村崇史
二つ目は「polne(ポルネ)」という、東刈谷駅から徒歩数分の場所にあるアパレルのセレクトショップです。敷地は、元パチンコ屋の駐車場に建てられた新築の長屋建築の一角です。通常、こうした長屋形式の店舗は、自分がそこに存在することをアピールするために大きな看板を掲げがちです。しかし、それでは街がグラフィック情報に侵食されてしまいます。そこで私たちは、看板に頼るのではなく、建築的な解釈で新しいファサードを作れないかと考えました。


写真:植村崇史 写真:植村崇史
具体的には、長屋の並びとは異なる軸で外部を建物内に引き込むような設計を行いました。開口部を全開にすると街とつながり、通路の突き当たりに全身鏡を配置することで、空間がどこまでも続いていくような「奥行き」を演出しています。半外部と内部を隔てる建具には回転扉を採用し、クライアント自身が空間を拡張できる仕掛けも施しました。単に目立つことだけを考えるのではなく、街に対して奥行きを作り、風景を少しでも良くすることを意識しています。
○愛知県知立市の 「YATSUDA APARTMENT」

写真:植村崇史
最後は、私の出身地である知立市の知立団地近くにある「YATSUDA APARTMENT」です。この地で長く不動産業を営むクライアントが持っていた建物をリノベーションし、新たに自社オフィスやテナントスペースを作るプロジェクトです。既存の建物は、道路境界ぎりぎりに建てられており、さらには別の建物に挟まれていたため、街に対して強い圧迫感がありました。そこで私たちは、あえて既存の外壁を減築し、セットバックさせることで街に対して空間を開放することを提案しました。


写真:植村崇史 写真:植村崇史
床面積を減らすことは不動産の常識からは外れますが、街に対して場所を提供し、地域の人々がくつろげるデッキやコーヒースタンドのような機能を設けることで、結果として建物の価値も上げることができます。実際に完成した建物は、木質化された外観と植栽が街の風景を変え、プライバシーを守りながらも地域に開かれた場所となっています。
こういったプロジェクトを通して、私が最近キーワードとして考えているのが「境界をほぐす」ということです。敷地境界線や外壁ラインといった物理的な境界、あるいは「敷地はここまでだから この中で何か作ろう」とか「 ここまでだからここに塀を建てて 自分の所有を明確化しよう」といった心理的な境界。そうした境界線を少しずつほぐし、所有の一部を街に提供していくことが、結果として街全体の魅力を高めることにつながるのではないかと考えています。そういった「境界をほぐし、みんなで共有できる場」を、スペースAquaでも一緒に作っていきたいです!
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