牛の命
八丈島唯一の牧場に生きる40頭のジャージー牛たちに充分な飼料を
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2025/11/15 07:00
八丈島の牛と歩む復興の日々
このたびの台風で、私たちのチーズづくりの源であるゆーゆー牧場が被害を受けました。
エンケルとハレのチーズは、この牧場の牛たちの命と、日々の営みの積み重ねがあって初めて形になります。
実は私自身、2013年4月に八丈島へ移住した半年後の10月、今回と同じように強い台風の直撃を経験しました。牛舎や搾乳棟は全壊し、その数日後にも再び台風が襲うという現実に、当時はただ呆然とするばかりでした。
12年越しに同じ光景を目にしたとき、悔しさとともに「またこの試練が来たのか…」という思いが胸にこみ上げました。
しかし、八丈島は古くから、牛と共に生きてきた土地です。
孤島ゆえに「鳥も通わぬ島」と呼ばれ、飢饉に直面した時代には、牛の命をいただくことで家族の命をつないだという記録すら残っています。
そんな島に、ひとつの証言があります。
慶応元年(1865年)10月、八丈島の牛飼いが子孫に伝えた家訓です。
「夫れ牛を蒭ふ事は農家第一の急務なり、
當家は牛を善く畜ふを以て代々の譽とせり。
これ故に子孫必ず慎んで之を習ひ學ぶべし。
萬一此訓に背く者は家督を除き、
養牛堪能の人を撰んで先祖を祭祀すべきなり。」
この言葉は、
「八丈島の人は牛を何より大切にし、その営みを世代を超えて守り抜いてきた」
という、歴史の中の確かな証言です。
私たちは、その思いの延長線上に、この島でチーズをつくっています。
ただの“食品”ではなく、
八丈島でしか生まれ得ない営みや文化のかけらが、そのまま形になったもの
だと考えています。
今回のクラウドファンディングで寄せられたご支援は、
単なる復旧のための支えではなく──
この長い営みを未来へと手渡すための、大切な灯り でした。
メッセージをくださった方、シェアしてくださった方、
そして一歩踏み出して支援という形を選んでくださった皆さま。
そのすべてに、心から感謝申し上げます。
牧場も牛たちも、まだ本格的な回復には時間がかかります。
けれど、皆さまが寄せてくださった思いが、私たちの背中を確かに押してくれています。
“普通でちょうどいい”チーズを、
もう一度この島の日常へ戻すために。
そして、先人たちが命がけで守ってきた「牛と生きる島の営み」を、これからも大切につないでいくために。
エンケルとハレは、八丈島乳業と共に歩みを止めません。
本当にありがとうございました。
どうかこれからも、静かに見守っていてください。
エンケルとハレ
魚谷孝之
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