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★奄美マングース事業の検証から見る「イエネコ指定」問題
★奄美マングース事業の検証から見る「イエネコ指定」問題
(写真・環境省)

マングース探索犬
(写真・環境省)

近年、外来生物法に基づく施策において「防除」という言葉が多用されています。「防除とは一律の殺処分(駆除)のみを指すものではない」と説明される場面が見られますが、実際の事業現場においてどのような手法と費用が投じられてきたのか、客観的な公的記録から検証する必要があります。
環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室長・中島治美氏が登壇した基調講演の映像記録(※公開動画:ノーバスネットYouTubeチャンネル「基調講演」より引用)からは、現場における事業の実態と財政上の課題が読み取れます。
• 参照動画: https://www.youtube.com/watch?v=kb8lAzudx84
以下に、講演における発言記録の引用を提示し、このマングース事業が「イエネコ(所有者不明猫)の防除推進外来種指定問題」とどのように直結しているのかを検証します。
1. 基調講演記録に見る「防除」の実態と財政の経緯
【捕殺手法と効率化について】
(25:50〜26:07)
「捕殺式の罠と言っても、獲った瞬間にマングースが死んでしまうような罠を使ったということで。生きているとですね、どうしてもその生きているうちに回収をしてっていうのをしないといけないんですけど、もう死んでいればですね、見回る必要がないので、こういった筒式の罠を島内(奄美大島)に3万個かけて捕獲圧をかけたということがございます。」
(26:18〜26:35)
「なかなかこの罠だとだんだん獲れなくなってくるんですね。で、最後の方はこの犬が追っかけてって獲るというようなことで、最後まであの駆除をし続けたということがございまして」
• 【検証】
行政が説明する「防除」の実務において、人件費や見回りコストの圧縮を目的として「即死型の捕殺トラップ」が大規模に運用されていた事実、および犬を用いた追尾・捕獲が実施されていた事実が語られています。
(写真・環境省)
かかった瞬間に息絶える即死型の捕殺トラップ(※)が大規模(3万個)に運用されていた

【駆除専門組織と特定法人への委託継続】
(25:20〜25:43) 「奄美マングースバスターズと言ってですね、まさにマングースの駆除だけを行う専門家集団を組織をして、これだけの人を雇っていたということなんですけれども。(中略)ピークは48人ということで、この奄美大島でマングースを駆除するだけにこれだけの人を雇って、まさに昼夜を問わず駆除してくださったということがございます。」
• 【検証】 事業遂行にあたり、長期間にわたり特定の事業主体(一般財団法人自然環境研究センター等)へ大規模な業務委託が継続され、雇用と予算が固定化していった経緯が示されています。
【財務省の財政査定に対する認識と予算獲得】
(27:35〜28:02) 「大体ですね、財務省なんかはですね、だんだん獲れなくなってくると予算は削ってこようとするんですね。なんかこうC/B(費用対効果)が悪いというか、1頭あたりにかかるお金が高すぎるとか言って非常に削ってこようとするんですけれども、ここで手を緩めると元の木阿弥なんだというようなことを言い続けて、なんとか予算獲得の努力を初先輩方がしてくださって、捕獲努力をかけ続けられたのが非常に成功にとって大きかったかなと思っております。」
(28:10〜28:26) 「予算の推移ですけれども、年間2億円ぐらいはかけ続けていますね。先ほどの専門家集団を雇い続けたというのもございますので、2億円ぐらいかかっていて、総額35億円、36億円ということでございます。」
• 【検証】 財務省が「1頭あたりの捕獲コスト高騰(費用対効果の悪化)」を理由に正当な予算削減(査定)を求めたのに対し、行政側が既存の事業維持を理由に協議を重ね、結果として総額35億〜36億円(年間約2億円)の公費投入が継続されたことが明かされています。
【補足 制度上の区分と対象動物の違いについて】 本検証においてマングース事業の事例を挙げるにあたり、以下の前提を明確にしておく必要があります。
1. 法制度上の区分の違い マングースは外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定されているのに対し、イエネコに関して現在議論されているのは「防除推進外来種」への指定案であり、制度上の位置づけや手続きの規定は異なります。
2. 法的保護の有無の違い マングースと異なり、現在ノネコ以外の猫は動物愛護管理法上の「愛護動物」に該当し、法律による保護と適正飼養・管理の対象とされています。
当会がマングース事業の公的記録を検証する目的は、動物の種や個別の捕獲手法を単純に同等視することではありません。「行政が『防除』という枠組みで事業を立ち上げた際、どのように予算が固定化し、費用対効果が問われ、現場の手法が効率優先へと傾斜していくのか」という【行政事業としての共通構造】を客観的に指摘し、予防的観点から警鐘を鳴らすことにあります。
2. 「マングース事業の構造」と「イエネコ問題」の不可分な結びつき
上記の基調講演記録によって明らかになった構造は、まさに現在進行形で進められようとしている「イエネコ(所有者不明猫)の防除推進外来種指定問題」にそのまま当てはまるものです。
• ① 「防除」という言葉の影で行われる現場の捕獲・処分 「防除=殺処分ではない」と説明されがちですが、マングース事業の例が示す通り、実務としての防除の本質は「トラップによる捕獲と駆除」です。全国に広範囲に存在するイエネコを防除対象に指定した場合、言葉の言い換えのもとで、同様の防除手法が検討・導入される可能性は否定できません。
• ② 恒常的な防除事業として予算が固定化する可能性 マングースの防除という限定された島での事業でさえ、年間2億円・総額35億円以上の巨額予算が特定法人等に流れ続けました。対象が全国無数に存在する猫へ拡大されれば、全国の自治体で防除委託予算が永続化し、特定の外郭団体や駆除業者へ公費が流れ続ける構図を生み出し絶え間ない負担となります。
• ③ 財務省が懸念した「費用対効果(C/B)の悪化」 マングース事業でも財務省から「1頭あたりの捕獲コストが高すぎる」と厳しい指摘が出ました。繁殖力の高いイエネコを全国で防除しようとすれば、捕獲難易度の上昇とともに1頭あたりの投入コストは跳ね上がります。国費のみならず、地方自治体の財政(地方税・交付税)を極度に圧迫することになりかねません。
• ④ 動物愛護管理法との「決定的な矛盾(税金の二重投資)」 現在、全国の自治体や市民ボランティアは、動物愛護管理法に基づき「TNR(避妊去勢手術による繁殖抑止と地域管理)」に多くの税金と私財を投じ、着実に野外の猫を減少させています。これと同じ対象に対して外来生物法に基づく「捕獲・防除」予算を別途投入することは政策目的が重複し、限られた財源の効率的活用という観点から極めて非合理的です。
• ⑤ 追尾・捕獲に伴う凄惨性と「捕獲犬側のアニマルウェルフェア(動物福祉)」の軽視 講演では、トラップにかからなくなった段階で「犬が追っかけて獲る」手法が紹介されています。しかし、この手法は捕獲対象動物だけでなく、捕獲に従事する犬の双方に過酷な負担(傷病や感染症、過度の精神的ストレス)を強めるものであり、国際的な動物福祉(アニマルウェルフェア)の基準に照らして大きな課題を含んでいます。
3. まとめ
奄美のマングース事業の検証からは、一度開始された防除事業が長期化・固定化し、費用対効果が悪化しても多額の公費投入が継続される構造が存在することが示されています。
これを全国の市街地・山野に存在する「イエネコ」に適用すれば、その影響は離島の事業とは比較にならない規模となり、行政現場の混乱、地方財政の圧迫、動物福祉の逆行、そして市民と行政の深い対立を招くおそれがあります。
外来生物対策を検討するにあたっては、動物愛護管理法との整合性、財政的合理性、そして動物福祉の観点から、慎重かつ十分な議論が不可欠です。
犬猫救済の輪は、ノネコ、地域猫、野良猫、飼い猫を含むすべての猫について、動物愛護管理法の理念のもとで命が尊重される社会を求めるとともに、イエネコの「防除推進外来種」指定の完全白紙撤回を強く求めます。
💖猫の医療費支援プロジェクトへお寄せいただいた皆様からのご寄付で、傷病猫たちへの医療費支援を行っています。
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