10月23日(金)の共創ワークショップ、問い④は長崎県・小値賀島から届いた「島をまるごと子どもの居場所にする受け入れチームとは?」です。
テーマオーナーは、小値賀町教育委員会・小値賀町ふるさと留学協議会会長で、学生寮「ちかまる寮」のハウスマスターを務める牧尾儀信さん。小値賀島で生まれ育ち、島を離れて長く働いたのち、定年退職を機にUターンし、令和4年11月からハウスマスターを務めています。
五島列島の北端に位置する小値賀島は人口約2,000人、高齢化率は50%を超えています。島内唯一の公立高校である県立北松西高校が廃止されれば、若者は15歳で島を出ざるを得ません。
「ふるさと留学」は制度開始から7年目。累計の受入実績は21名で、現在は女子寮「ちかまる寮」と男子寮に男女各6名、計12名を受け入れる体制です。一方で、少人数環境への適応の難しさ、地域側の受け入れ負担、留学生と地域のミスマッチといった課題も挙げられています。
牧尾さんが取り組みの手応えを確信したのは、都会から来た子どもの、元の学校の教職員からの言葉でした。
この子からこんな笑顔は見たことがありませんでした。
少人数の環境では「一人ひとりに出番があり」「自分が必要とされている」という自己肯定感が生まれる。複数のハウスマスターが日々ミーティングで関わり方を工夫し、温かく見守り続ける体制を築いています。変化は子どもだけではありません。天の川や日の出・日の入りといった日常の風景が、子どもたちの素直な感動を通じて「宝物」として再認識される——地域の大人にも変化が起きています。
小値賀島の「問い」https://ritokei.com/forum/shimakaigi2026_theme04_ojika
リトケイは離島留学の現場を継続的に取材してきました。10月23日の議論を深めるために、アーカイブから4本の記事をご紹介します。
①【下甑島】「クソババア上等」——里親さんたちが支える集落

鹿児島県・甑島列島の下甑島、鹿島地区。ここで実施されているのが「ウミネコ留学制度」です。里親型の受け入れ体制で、歴史が長く、ベテランの里親が多数いる地域です。ウミネコ留学実施委員会の中野会長は、20年以上にわたり複数の留学生を受け入れてきました。
リトケイ代表・鯨本あつこが5歳と8歳の子どもたちとともに訪ねた取材日記には、里親のお母さんのこんな姿が記されています。留学生から「クソババア」と言われたときの反応が、
「クソババア上等」とうれしそうに語ってくれました
というもの。そのお母さんは、自身の人生観をこう語っています。
わたし、人間が大好きなんです。
支えているのは里親だけではありません。鹿島小学校は集落の真ん中に位置し、休日には子どもたちが自由に校庭に集まって遊び、集落の大人がその様子を見守る。教頭先生、診療所の先生、実施委員会の会長——学校を中心とした見守り体制が地域に根づいています。釣りなどの自然体験や、こっぱもち・混ぜごはん・刺身といった郷土料理を通じた文化継承も、留学生の日常にあります。
令和6年度は定員に達し、募集完了となりました。
小値賀島の議論に向けて:小値賀島は寮型、下甑島は里親型と、受け入れの形は異なります。ただ「集落の大人が自然に見守る」という構造は、寮型でも参考になるかもしれません。牧尾さんが挙げる「地域側の受け入れ負担」を、どう分散させるか。20年以上受け入れを続ける里親がいる地域の空気は、ヒントになりそうです。
▶ https://shimaiku.ritokei.com/posts/diary20240112/
②【隠岐島前】「問いを立てられる子は、折れない竹のよう」

島根県立隠岐島前高等学校で始まった「高校魅力化プロジェクト」。取材当時で開始から12年が経過しており、「グローバルとローカルを結び、不確定性の高い時代にも対応できる人材の育成」を目的に掲げています。
記事で大野佳祐さんが語るのは、「問い」というキーワードです。問いを立てられる生徒が伸びていくことを実感したといい、こう表現しています。
問いを立てられる子は、折れない竹のようにしなやかで、落ち込みなどの"揺れ"が起きたとしても、戻ってくることができる。
その考えは道具にもなっています。藤代圭一さんとの協働で制作された「しつもんカード」は、高校生が未来の「私」に贈る問いの対話型カードセット。「10年前の自分に会えるとしたら、何を伝えたいですか?」といった問いが並びます。
取り組みは高校の外にも広がっています。大人の島留学、企業向け研修、そして2020年開始の「Life is Learningツアー」。「まっさらな島に来て、自分と向きあう」をコンセプトに、約20名の社会人が参加し、Unlearn(アンラーン)の過程に焦点が当てられています。
小値賀島の議論に向けて:「少人数環境への適応困難」は、小値賀島が挙げる課題のひとつです。隠岐島前が向き合ってきたのは、学力や進路指導だけでなく、子どもが自分で問いを立てられるようになる過程でした。受け入れチームが提供すべきものは何か——生活の支援だけでなく、学びの設計も含まれるのかもしれません。
▶ https://ritokei.com/pickup/k39_11
③【隠岐島前】「大人の島留学」という受け入れ方

同じ隠岐島前地域(海士町、西ノ島町、知夫村)では、国内外の若者を対象とした中長期就労型のお試し移住制度が運営されています。
種類と期間は3つに分かれています。
- 大人の島留学:1年間〜
- 複業島留学:2年間〜
- 島体験:3カ月〜
留学生はシェアハウスで暮らし、電動自転車を1台貸与され、遠距離の移動は数人でシェアする車を使う。就業先は役場、観光協会、一次産業の現場などさまざまです。
記事に登場する留学生たちは、島での暮らしの充実感の源として「島の人とのスポーツ活動」「自然との触れ合い」「食事」を挙げています。
小値賀島の議論に向けて:「受け入れチーム」を子どもの受け入れだけで考えるか、若い大人の受け入れも含めて考えるか。ハウスマスターや地域コーディネーターの担い手不足は、多くの島に共通する課題です。若者が中長期で島に滞在する仕組みは、受け入れチームの人手そのものを生む可能性があります。
▶ https://ritokei.com/pickup/k39_10
④【全国】離島留学には、4つの受け入れパターンがある

リトケイが毎年まとめている「離島留学」募集情報。令和8年度版では、新潟県(粟島、佐渡島)、東京都(青ケ島)、三重県(菅島、答志島)、兵庫県(沼島)など、全国の島の制度が一覧になっています。高等学校では北海道(礼文島、天売島、奥尻島)、新潟県(佐渡島)、島根県などが掲載されています。
受け入れ体制は「里親型」「合宿型」「親子型」「孫もどし型」の4パターンに整理されています。
各島の特徴も紹介されています。粟島は「豊かな自然の力」「島の暮らしによる地域の力」「命の教育」を軸とした学び。答志島は「寝屋子制度」など地域独特の文化体験。小中併設校の利点を活かした個別指導を行う島もあります。
小値賀島の議論に向けて:全国には多様な受け入れの形があります。小値賀島の寮型に、里親型や親子型の要素を組み合わせることはできるか。「孫もどし型」のように、島にルーツのある子を迎える発想は使えるか。受け入れの選択肢を増やすことが、ミスマッチを減らす道かもしれません。
▶ https://ritokei.com/grow/34595
10月23日、話してみたいこと
4本の記事から、ワークショップで深めたい論点が見えてきます。
- 「チーム」に誰が入るのか:ハウスマスター、学校、診療所、集落の大人。下甑島のような重層的な見守りを、小値賀島でどう組めるか
- 受け入れ負担をどう分散するか:特定の人に集中しがちな負担を、地域全体でどう分け合うか
- ミスマッチを、どこで減らせるか:受け入れ前の段階か、滞在中の関わり方か。4つの受け入れパターンの組み合わせは有効か
- 生活支援の先に、何を用意するか:隠岐島前の「問いを立てる」学びのように、寮での暮らしと学びをどうつなぐか
- 担い手をどう増やすか:大人の島留学のように、若い世代が中長期で関わる仕組みは小値賀島でも成り立つか
- 島の側の変化を、どう共有するか:「宝物」に気づいた大人の変化を、受け入れの動機としてどう伝えるか
牧尾さんが待っているのは、全国で高校や地域の魅力化に携わる方、他地域で学生寮運営や子どもの居場所づくりに取り組む方、島の子どもたちの学びや成長に関わる仕事に関心のある方です。
ワークショップへのご参加はこちらのサイト(Peatix)をご覧ください。
クラウドファンディングへのご支援をお願いします
「未来のシマ共創会議 2026」は今年で3回目。小値賀島をはじめ6つの島々が「本気で解決したい問い」を携えて、10月23日に東京へ集まります。
この会議を実現するため、8月末までクラウドファンディングに挑戦しています。いただいた資金は、共創ワークショップの運営費、アーカイブ動画の制作費、成果をまとめた公式ブックの発行費などに使わせていただきます。1,500円からご支援いただけます。
15歳で島を出るしかない未来ではなく、島でこそ育つ子どもがいる未来へ。ぜひ、一緒に考えてください。
👉 クラウドファンディングページ https://for-good.net/project/1004074
👉 共創ワークショップの詳細・申し込み https://ritokei.com/campaign/co-creation
👉 シマ育コミュニティ(子育て・離島留学の情報サイト) https://shimaiku.ritokei.com/