10月23日(金)の共創ワークショップ、問い③は山口県・祝島から届いた「部活動の場を島で『自給』するには?」です。
テーマオーナーは、群馬県出身・移住8年目の一本釣り漁師、秋山鈴明さん(33歳)。祝島は瀬戸内海に浮かぶ周囲12km、人口250人ほどの島です。
祝島小学校の児童は現在8名。来年度は10年ぶりに中学生が誕生する予定ですが、島に中学校はなく、本土の上関中学校へ片道30分・1日3便の定期船で通学することになります。朝6時45分出発、帰りは16時20分。放課後の部活動に参加することは、ほぼできません。上関中学校にある部活も、テニス部と文化サークルの2つです。
秋山さんが構想するのは、学校の枠組みを超えて地域で部活を運営することです。シーカヤックやマリンスポーツ、島の木工職人から学ぶ手仕事、島のお祭りや「島づくりそのもの」を企む部活。「勝敗」や「大会成績」から「この島でしかできないやりたいことに没頭」する部活への転換を目指しています。
介護施設も保育園もない人口250人の祝島で、部活は単なる「放課後の場所」ではなく、世代を超えて混ざり合い「子どもは地域全体で育てる」を実装する「新しいコミュニティの核」と位置づけられています。
祝島の「問い」 https://ritokei.com/forum/shimakaigi2026_theme03_iwaishima
リトケイはこれまで、島の教育や子どもの学びの現場を取材してきました。10月23日の議論を深めるために、アーカイブから4本の記事をご紹介します。
①【大崎上島】学校の課題に、地域と生徒がともに向き合う

広島県・大崎上島町。人口8,000人弱のこの島で、広島県立大崎海星高校は2014年、統廃合の危機に直面しました。広島県教育委員会が「生徒数が80人を下回った場合、統廃合を検討する」方針を示したためです。
地元の取釜宏行さん(現・株式会社しまのみらい代表取締役)は「事実が飲み込めなかった」と振り返り、島根県の隠岐島前高校をモデルとした「高校魅力化プロジェクト」をスタート。5年で生徒数は100人を超えました。
注目したいのは、生徒自身が動きはじめたことです。「普通科高校がなくなれば、島の未来も危うくなる」という課題認識から、生徒らはSNSで島や学校の魅力を発信する「みりょくゆうびん局」を自主発案。東北芸術工科大学のシンポジウムに参加した生徒が西日本版の開催を熱望し、「SCHシンポジウム西日本」の開催まで実現させました。
中原健次校長は、最初は「大人がつくった原稿を棒読み」だった生徒たちが、島や学校の課題に向き合い続ける中で「大勢の前でプレゼンテーションを行えるまでに成長」したと語っています。
取釜さんは、島内の「関係者間の距離は近い」ことを強調し、こう述べています。
問題が起きたら関係者がパッと集まり、スピーディーに解決する。問題解決の速さはどこにも負けないと思います。
祝島の議論に向けて:秋山さんが構想する「島づくりそのものを企む部活」は、大崎上島の生徒たちの活動と重なります。子どもを「与えられる側」ではなく「島の課題に関わる側」として位置づけたとき、部活の設計はどう変わるでしょうか。
▶ https://ritokei.com/pickup/oosakikamishima_1
②【屋久島】自然のなかで、知識が知恵に代わる

鹿児島県・屋久島。合同会社モスガイドクラブ/モスオーシャンハウスの今村祐樹さんは、企業研修、ファミリープログラム、キッズキャンプ、リトリートを手がけています。
軸にあるのは「海10日、里10日、山10日」という屋久島の伝統的な考え方と、「自然はみんなのもの」という島の感覚です。流木で食事を調理し、灰を畑の肥料として土に還す。森と海と川のつながりを、体で感じる2泊3日。
今村さんは「自然は本来、人間の手には負えない」と語ります。だからこそ、そこでの体験は座学とは別の質を持ちます。家族向けプログラムに参加した子どもが「土の中に水が流れる絵」を描くようになるなど、見えない世界を想像する力が育つといいます。
企業研修では、組織コミュニケーションの担当者が「風通しの良い会社」という抽象概念を、屋久島で体感した風を通じて実感的に理解した——記事はそれを「知識が知恵に代わる」経験として紹介しています。
祝島の議論に向けて:「勝敗や大会成績ではなく、この島でしかできないことに没頭する」という秋山さんの構想を、どう中身にするか。島の自然を教材にするノウハウは、すでに事業として成立している島があります。
▶ https://ritokei.com/pickup/k39_14
③【特集|島だから学べること】島は、受け入れる仕組みを持っている
『季刊ritokei』39号では、島々の修学旅行・体験キャンプのプログラムが紹介されています。
広島湾域まるごと感動体験(周防大島、大崎上島、江田島、田島・横島)は、広島湾ベイエリア・海生都市圏研究協議会が主体。かつての水軍の手漕ぎ船「櫂伝馬(かいでんま)」の競漕体験でチームワークを学ぶほか、漁業・農業体験、郷土料理づくりを実施しています。
五島感動しま旅!(長崎県五島市)は、五島市体験交流協議会が主体。海との共生や環境保全の学習、漁業体験、洋上風力発電を通じたSDGs学習などを行い、民泊の受け入れ先は約150軒にのぼります。
沖縄では、伊江島が2003年から民泊体験を実施。久米島は「1島1校」方式で環境学習、地域歴史文化、国指定重要無形文化財・久米島紬の染めと織り、戦跡巡りなどを展開しています。
祝島の議論に向けて:部活を「島の中の子どものため」だけに設計するのか、島外の子どもも受け入れる形にするのか。五島の民泊150軒のような受け入れ基盤は、人口250人の祝島でどこまで可能でしょうか。逆に、小さいからこそできる形もあるはずです。
▶ https://ritokei.com/pickup/k39_16
④【離島留学】受け入れには、4つのパターンがある

リトケイが毎年まとめている「離島留学」募集情報。令和8年度版では、新潟県(粟島、佐渡島)、東京都(青ケ島)、三重県(菅島、答志島)、兵庫県(沼島)など、全国の島の制度が一覧になっています。
受け入れ体制には「里親型」「合宿型」「親子型」「孫もどし型」の4パターンがあると整理されています。
各島の特徴も紹介されています。粟島は「豊かな自然の力」「島の暮らしによる地域の力」「命の教育」を軸とした学び。答志島は「寝屋子制度」など地域独特の文化体験。小中併設校の利点を活かした個別指導を行う島もあります。
祝島の議論に向けて:祝島の子どもは、中学から本土に通います。この「島から出ていく」構造と、離島留学という「島に入ってくる」構造は、実は同じ課題の裏表です。地域の部活が成立すれば、それは島外の子を惹きつける理由にもなり得ます。
▶ https://ritokei.com/grow/34595
10月23日、話してみたいこと
4本の記事から、ワークショップで深めたい論点が見えてきます。
- 子どもを「担い手」に置けるか:大崎上島の生徒のように、島の課題に関わる活動そのものが部活になりうるか
- 島の自然と職人を、どう教材にするか:屋久島の事例のように、体験を設計するノウハウをどう持ち込むか
- 誰が指導し、誰が引率するのか:学校の先生ではない担い手を、どう確保し、どう関係を結ぶか
- 船の時刻に縛られない活動時間を、どうつくるか:帰りが16時20分という制約は、地域運営ならどう外せるか
- 島外の子どもも受け入れるか:受け入れれば人が増えるが、負担も増える。250人の島でどこまで可能か
- 「自給」の範囲をどこまでとるか:資金、人、場所、道具。何を島でまかない、何を外に頼るか
秋山さんは、不動産・建築だけでなく、教育・福祉・子育て支援の現場関係者、「地域自給」「協同組合」「コミュニティの自治」に関心のある方、既存制度を根本から問い直せる方、中山間地域で類似課題に直面している方を求めています。祝島の認知度は問いません。
定員は最大25名です。
ワークショップへのご参加はこちらのサイト(Peatix)をご覧ください。
クラウドファンディングへのご支援をお願いします
「未来のシマ共創会議 2026」は今年で3回目。祝島をはじめ6つの島々が「本気で解決したい問い」を携えて、10月23日に東京へ集まります。
この会議を実現するため、8月末までクラウドファンディングに挑戦しています。いただいた資金は、共創ワークショップの運営費、アーカイブ動画の制作費、成果をまとめた公式ブックの発行費などに使わせていただきます。1,500円からご支援いただけます。
来年、祝島に10年ぶりの中学生が誕生します。その子の放課後をどうつくるか——ぜひ、一緒に考えてください。
👉 クラウドファンディングページ https://for-good.net/project/1004074
👉 共創ワークショップの詳細・申し込み https://ritokei.com/campaign/co-creation
👉 シマ育コミュニティ(子育て・離島留学の