10月23日(金)の共創ワークショップ、問い⑤は山口県・佐合島から届いた「電気や水の維持コストを下げながら、災害にも強いインフラを自給するには?」です。
テーマオーナーは「人口5人の島から未来をつくる会」の梅本将輝さん。1993年生まれ、普段は東京で宇宙開発の仕事に従事しながら、ライフワークとして祖父の故郷である佐合島の開発に取り組む二拠点居住者です。2025年1月、祖父から「島を継がないか」と言われたことが関わりのきっかけでした。
山口県平生町の南に位置する佐合島は、面積1.32平方キロメートル、平地はわずか5%。かつて約1,000人規模だった人口は、2026年現在で5人(4世帯)です。
ライフラインは、住民の手で支えられています。水道は島内の公共深井戸が水源で、日量2万リットル規模の設備を5人では使い切れないなか、水道法に基づく日々の採水検査を住民自身が実施。下水道はなく各家庭が汲み取り式で、住民が小型バキュームカーを運転して各家庭を回収し、島内の汲み取り用船に溜め、3〜6ヶ月ごとに本土からの汲み取り船で運び出しています。電気は隣の長島から送電鉄塔経由で送られ、強風・台風による断線リスクがあり、断線時は本土から発電車が対応します。
梅本さんが持つ危機意識は、こうです。内海の離島は「まだ大丈夫」と見られがちだが、人口減で一人あたりの維持コストは跳ね上がる。老朽化インフラの維持管理計画は後回しになりやすく、「現状維持のまま衰退」を受け入れる傾向がある。そして人がいなくなった瞬間にインフラが切り離され、再接続コストが高すぎて二度と住めない島になる可能性がある——これは全国の離島・中山間地域に共通する構造だといいます。
構想するのは「フェーズフリー」な複線化です。井戸の自家浄水、下水の島内処理、太陽光と蓄電池を組み合わせた複線化により、本土品質に縛られず維持コストを削減し、災害時にも途絶しないインフラへ段階的に移行する。島全体の電力は、停電時に発電車一台で足りる規模です。
佐合島の「問い」 https://ritokei.com/forum/shimakaigi2026_theme05_sago
リトケイは島の防災と災害復興を、事業の柱のひとつとして取材・支援してきました。10月23日の議論を深めるために、アーカイブから3本の記事をご紹介します。
①【八丈島】台風のあと、島で何が起きていたか
2025年10月、台風22・23号が八丈島・青ヶ島を襲いました。記事には「特に八丈島では建物の損壊や土砂崩れ、断水など甚大な被害が出ました」と記されています。
島旅フォトライターのいづやんさんによる寄稿では、10月から11月前半の島の状況として「断水で水も出ないところが多いし、道路も寸断され、宿や店が営業できないので観光に来るのはNG」という島の声が紹介されています。
定宿の女将さんの言葉も印象的です。「台風が襲ってきた夜は強烈な風と雨が怖くて一睡もできなかった」と語りながら、
断水や停電はなかったし、他の地区の被災した方々に比べたらずいぶん優しいほうでした
とコメントしています。同じ島のなかでも、地区によって被害の度合いが大きく異なることが分かります。
12月の訪問時点では、かなりの割合の宿や飲食店、観光施設が営業を再開していた一方で、復旧作業を優先している施設や、被害の大きかったエリアへの立ち入り禁止も続いていました。筆者は「被災地に『遊びに行く』ことに、迷いや戸惑いがある人も多いと思います。僕もそうでした」と率直に記したうえで、「島に来てもらうのが、今は一番の応援になるのです」と結んでいます。
佐合島の議論に向けて:断水と停電が、島の暮らしを直接止めます。佐合島が構想する「複線化」は、まさにこの事態への備えです。加えて、同じ島でも地区差が生じるという事実は、5人・4世帯という規模の島で何をどこまで備えるべきかを考える手がかりになります。
▶ https://ritokei.com/article/hottopics/36202
②【寄稿】島の災害には、島固有の構造がある
日本島嶼学会参与の長嶋俊介さんによる寄稿では、島の災害の特性が整理されています。
長嶋さんは「島への理解を深める柱の一つに災害がある」と述べ、噴火、地震津波、台風、豪雨、干ばつなどへの対応が「持続可能性の基本ですらある」と指摘。そして「島の個性と事情に対する理解が進めば、災害対応の有効性・機能性・支援力が向上する」と強調しています。
島に固有の条件として挙げられているのが「環海性」です。海島は「衝立のない強風被害」に直面し、津波でも「震源地からの直撃を受けやすい」。島特有の海底地形や湾入の影響で「水位がかさ高になりやすく、渦やすり抜け」が発生し、「被害も増しかねない」と述べられています。
さらに深刻なのが「狭小性」「隔絶性」による被害の拡大です。宮城県・出島では全島避難下で廃校が決定され、記事の時点で「学校が再開される予定はない」状況。江島では隔絶性により「ボランティアを呼ぶことも難しく、業者も後回しになる」という復興遅滞の課題が指摘されています。
佐合島の議論に向けて:「人がいなくなった瞬間にインフラが切り離される」という梅本さんの危機意識と、この寄稿が示す「狭小性・隔絶性による復興遅滞」は、同じ構造を別の角度から見たものです。復旧を外部に頼れないなら、途絶しない設計を先につくる——その論理を、どこまで具体化できるか。
▶ https://ritokei.com/voice/21071
③【五島市】「エネルギーの島」を目指した島の歩み
長崎県・五島市は、大小152の島(11の有人島と52の無人島)からなり、記事執筆時点の人口は37,631人(2018年1月31日時点)。2014年に再生可能エネルギー基本構想を策定し、2030年度に100%超のエネルギー自給率達成を目標に掲げました。発電やメンテナンス事業を産業として育てる方針も含まれています。
2014〜2015年に環境省が椛島沖で実施した実証試験では、水質、鳥類のバードストライク、生態系、漁獲試験が調査され、「調査した全ての項目について環境への影響が小さいことが確認されました」と記されています。2016年春には福江島沖の浮体式洋上風力発電所「はえんかぜ」が商業運転を開始しました。
産業も育っています。2008年に社員3名で創設された企業「イー・ウインド」は、設備の保守管理・メンテナンスを担い、記事執筆時点で約30名を雇用。メーカーから推奨メンテナンス事業者に指定されています。
なお、五島市沖の浮体式洋上風力発電事業はその後も進み、2026年1月に商用運転が開始されています。
佐合島の議論に向けて:五島市は人口3万人超、佐合島は5人。規模はまったく異なりますが、「島のエネルギーを島でつくる」という発想と、それを産業として育てる視点は共通して検討できます。太陽光と蓄電池の複線化を、誰が保守し、誰が更新していくのか。設備を入れた先の運用体制まで含めて考える必要がありそうです。
▶ https://ritokei.com/pickup/180307-2
10月23日、話してみたいこと
3本の記事から、ワークショップで深めたい論点が見えてきます。
- 「本土品質」をどこまで手放せるか:水質基準、下水処理、電力の安定供給。制度上どこまで独自の運用が可能か
- 誰が保守し、誰が更新するのか:設備を導入した先の運用体制。5人の島で、島外の誰にどう関わってもらうか
- 段階的移行の順番をどう決めるか:水・下水・電気のうち、どれから複線化に着手するのが現実的か
- 「途絶しない設計」のコストをどう見積もるか:初期投資と維持コストの分岐点はどこにあるか
- 人がいなくなる前に、何を決めておくべきか:インフラの切り離しと再接続コストという構造に、いま打てる手は何か
- 関係人口は、防災にどう効くのか:日常的に島に関わる人が、災害時にどんな役割を果たしうるか
梅本さんが求めているのは、自分の島や過疎地域のインフラ・防災を本気で変えたい島民や地域キーマン、限界集落や中山間地域で水道・電気の維持管理や財政負担に悩む自治体担当者、オフグリッド・太陽光発電・雨水利用・バイオトイレなど小規模分散型自給自足インフラに関する技術やアイデアを持つ企業・技術者、「不便を豊かさに変える」コミュニティデザインや住民主体の自治に関心のある方、インフラの自給自足やDIYに関心があり日本の地域のあり方を一緒に考えたい方です。
クラウドファンディングへのご支援をお願いします
「未来のシマ共創会議 2026」は今年で3回目。佐合島をはじめ6つの島々が「本気で解決したい問い」を携えて、10月23日に東京へ集まります。
この会議を実現するため、8月末までクラウドファンディングに挑戦しています。いただいた資金は、共創ワークショップの運営費、アーカイブ動画の制作費、成果をまとめた公式ブックの発行費などに使わせていただきます。1,500円からご支援いただけます。
人口5人の島で見つかる答えは、これから同じ構造に直面する多くの地域にとっての手がかりになります。ぜひ、一緒に考えてください。
👉 クラウドファンディングページ https://for-good.net/project/1004074
👉 共創ワークショップの詳細・申し込み https://ritokei.com/campaign/co-creation