10月23日(金)の共創ワークショップ、問い⑦は特別テーマ「大規模災害時の復旧復興に『必要な機能』を官民連携で備えるには?」です。
目指すのは、使われないまま維持費を消費する防災施設ではなく、日常的には住民が集うコミュニティスペースなどの機能を持たせ、有事にはそのまま防災拠点となるような、地域に根ざした「生きた防災施設や仕組み」を官民連携で実現することです。
防災施設が日常的に住民に使われる設計であれば、地域内の公共施設を集約することで財政コストの削減にもつながる——「フェーズフリー」という考え方が、この問いの軸にあります。
特別テーマの「問い」https://ritokei.com/forum/shimakaigi2026_theme07_tokubetsu
リトケイは災害復興事業を4つの柱のひとつに掲げ、島の防災と復興を取材・支援してきました。10月23日の議論を深めるために、アーカイブから4本の記事をご紹介します。
①【共創会議2025】「72時間をどう生き抜くか」

昨年10月8日に開催された「未来のシマ共創会議2025」の特別セッションでは、島々と民間企業のキーマンが「生き残れる島の防災と関係人口」をテーマに議論しました。今回の特別テーマは、この議論の続きにあたります。
内閣官房防災庁設置準備室の大山璃久参事官補佐は、**「72時間をどう生き抜くか」**を離島における最大の課題と指摘。外部支援に頼らず、燃料・水・通信を自力で確保する仕組みが必須と述べました。
島々からは、より踏み込んだ数字が挙がっています。
- 屋久島町の岩川健さん:10日程度の備蓄を推奨し、支援が1週間来ないことを前提に準備すべきと強調
- トカラ列島の久保源一郎村長:「島の自治を守り、島を守ること」が生き残れる島の条件と主張
- 奥尻島の今谷好志さん:スターリンク衛星通信を常設し、72時間の通信維持体制を整備
民間企業の動きも報告されました。LINEヤフー株式会社は1,600以上の自治体と災害協定を締結し、能登半島地震では20億円超の寄付金と35万点の物資を提供。大和リース株式会社は応急仮設住宅の建設と「人が戻りたくなる地域づくり」を目指すとしています。
鯨本あつこは、離島の「助け合い」文化を「支え合う関係」として企業・行政と協力していく必要性を指摘しました。
議論に向けて:昨年の会議で挙がった「72時間」「10日の備蓄」「常設のスターリンク」は、いずれも平時から置いておくものです。それをどこに置き、誰が維持するのか。「生きた防災施設」の中身を具体化する出発点になります。
▶ https://ritokei.com/pickup/shimakaigi2025_04
②【八丈島・青ヶ島】つながりが、支援を動かした記録

令和7年(2025年)10月の台風22号により、東京都の八丈島(八丈町)と青ヶ島(青ヶ島村)で大きな被害が発生しました。土石流が流れ込むなど、島の主要施設や事業所が損壊・全壊する事態となりました。
リトケイは一般社団法人アットアイランドと連携し、経済復興募金を実施(2025年10月10日〜2026年3月31日、受付終了)。総寄付額は15,990,479円、寄付者数は376名(法人・匿名寄付含む)でした。
支援金の分配は段階的に行われました。
- 第1次(10月24日):25事業者に387万円
- 第2次(11月21〜28日):49事業者に590万円
- 第3次(1月末):3事業者に15万円
- 合計:77事業者に992万円を直接支援
支援対象事業者は85社(八丈島83社、青ヶ島2社)。あわせてクラウドファンディング支援も行われ、12事業者が約3,572万円を調達しました。
リトケイの支援は4段階で整理されています。①緊急支援金の分配(事業継続・再開資金の直接支援)、②クラウドファンディング支援、③シマビト大学開催による関係人口創出、④全国島嶼地域の防災企画推進による防災力強化。認定NPO法人の仕組みを活用した迅速な分配が特徴です。
議論に向けて:災害が起きてから関係を築くのでは間に合いません。ここで動いたのは、平時から島々とつながっていたネットワークです。「必要な機能」には、建物だけでなく、こうした関係と実務の仕組みも含まれるのではないか。官民連携の「民」に何を期待するかを考える材料になります。
▶ https://ritokei.com/ritokeiinfo/35622
③【奥尻島】観光と教育旅行のなかに、防災が組み込まれている

北海道・奥尻島では、1993年7月の北海道南西沖地震の教訓をもとに、防災学習プログラムが構築されています。
内容は「防災ロールプレイ」(地震が発生したことを想定し訓練を行う)、奥尻島津波館での学習(被災当時の映像・写真や、復興した街並みを見学)、そして「島人からの震災体験や教訓などの聞き取り、炊き出しなどを体験」するプログラムです。
これらは主に教育旅行向けとして位置づけられ、海の幸や奇岩巡りといった従来の観光コンテンツと並行して提供されています。
議論に向けて:奥尻島では、防災が観光・教育というかたちで日常の経済活動のなかに組み込まれています。「フェーズフリー」を施設のハードだけでなく、プログラムやサービスとして考えたとき、どんな選択肢がありうるか。今谷さんが登壇される今回のワークショップでは、この蓄積が議論の土台になりそうです。
▶ https://ritokei.com/pickup/kankou_okushiri
④【寄稿】復興の全プロセスで、QOLが問われる
日本島嶼学会参与の長嶋俊介さんによる寄稿(後編)では、東日本大震災の島々の復興過程が検証されています。
まず示されるのは、厳しい事実です。宮城県・出島では「2010年時点の人口465人に対して25人(約5.4%)もの犠牲があった」。これは「離島の人的被害は僅少」という見方を否定するデータだと記されています。逃げ遅れの原因については「電源喪失による医療機器等の不具合を除けば、逃げ遅れと慢心(第一波後に荷物を取りに帰ったり、船が心配で漁港に向かうなど)があった」と分析され、「失敗学の継承は、津波経験者、関係者、未遂者等を通じ、該当者以外にも幅広く、繰り返し伝えていくことが必要である」と述べられています。
支援の実際についても具体的です。浦戸諸島では「朴島の有志が小舟で送迎を続けていた」。寒風沢島では国際NGOオペレーション・ブレッシング・ジャパンが「各個人別にメガネ(後に漁網・小舟・軽トラ)等、ニーズを聞き取りながら供与」しました。日本のNGOについては「政府の手が届かない生活臨時資金の個別供与等も機敏にしており、各々の役所(やくどころ)や機能の分担により威力を発揮した」と評価されています。
そして長嶋さんは、復興を通した視点をこう提示します。
防災・発災・避難・仮設生活(復旧待機)・復旧・復興・恢興の全プロセスでQOL(quality of life=生活を含むライフ)の質が問われる
どこかで配慮が欠落したり犠牲にしたもののツケは後々重くのしかかる
議論に向けて:「各々の役所(やくどころ)や機能の分担により威力を発揮した」という一節は、官民連携そのものの記述です。行政が担うもの、民間が担うもの、NPOが担うもの——「必要な機能」を洗い出すとき、この分担の実例は具体的な参照点になります。
▶ https://ritokei.com/voice/21109
10月23日、話してみたいこと
4本の記事から、ワークショップで深めたい論点が見えてきます。
- 「必要な機能」に何を含めるか:施設や設備だけでなく、関係、実務の仕組み、資金の流れまで含めて洗い出せるか
- 30年後の姿から、いま何を決めるか:奥尻町が経験している「震災から32年」の現実を、これから施設をつくる地域はどう先取りできるか
- 制度のミスマッチをどう越えるか:日常利用を備えた設計が交付金要件から外れる問題に、官民連携で打てる手はあるか
- 日常の使われ方をどう設計するか:住民が本当に集う場になるために、何が必要か。奥尻島のようにプログラムとして成り立たせる道はあるか
- 民間・NPOの役割分担をどう決めるか:八丈島の支援や東日本大震災のNGOの動きから、平時に決めておけることは何か
- 平時のつながりを、どう維持するか:災害時に機能する関係は、何によって保たれるのか
参加を待っているのは、島や地域の防災・インフラを真剣に変えたい島民や地域キーマン、現場課題に対応する自治体防災担当職員や地方議員、防災やフェーズフリーの独自技術・ソリューション・製品を持つ民間企業、教育・福祉・コミュニティデザインから日常のつながりや居場所づくりに関心がある方、そして島に縁がなくても地域の「日常の備え」や官民連携に関心がある方です。
👉 共創ワークショップの詳細・申し込み https://ritokei.com/campaign/co-creation
クラウドファンディングへのご支援をお願いします
「未来のシマ共創会議 2026」は今年で3回目。この特別テーマを含む7つの「本気で解決したい問い」が、10月23日に東京へ集まります。
この会議を実現するため、8月末までクラウドファンディングに挑戦しています。いただいた資金は、共創ワークショップの運営費、アーカイブ動画の制作費、成果をまとめた公式ブックの発行費などに使わせていただきます。1,500円からご支援いただけます。
災害はいつ起きるか分かりません。けれど、起きたときに機能する仕組みは、いまからつくることができます。ぜひ、力をお貸しください。
👉 クラウドファンディングページ https://for-good.net/project/1004074