「お金があったら」を、あえて本気で考えてみる
「お金があったら何をしたいですか?」と聞かれると、若干難しさを感じてしまうこともあります。それは、教育の現場では、まず「予算がないからできない」が先に来るからです。
でも、田川で子どもたちと関わる中で、ずっと胸の奥にしまってきた「本当はこれがやりたい」があります。今日はそれを、遠慮せずに書いてみます。
僕の根っこにある問いはひとつです。生まれた場所で、人生が決まってはならない。
そして、教育は「自分で決められる人」になるためにある。この2つを軸に、お金があったら田川でやってみたいことを5つ挙げます。
お金があったら、やってみたい5つのこと

1. 「学びたい」を止めない奨学金をつくる
田川には、家庭の事情で進学や挑戦をあきらめる子がいます。能力や意欲の問題ではありません。たまたま、そこに生まれたというだけです。
だから、返さなくていい奨学金をつくりたい。成績だけで選ぶのではなく、「やってみたいことがある」子を応援する奨学金です。大学進学だけでなく、海外研修、資格取得、地域での小さな挑戦にも使えるものにしたいと考えています。

2. 建物ではない「学校」をつくる
最近、「学校をつくりたい」と思うようになりました。ただし、僕にとって学校は建物ではなく概念です。
たとえば、寮で生活を共にしながら学び合う場。地域そのものを教材にして、商店街や森や町役場で学ぶ場。田川の外から来た若者と出会い、「別の当たり前」に触れる場。そこで学んだ子が、次の子を育てる側に回る。そんな連鎖が起きる場所を「学校」と呼びたいのです。
生活を共にする濃さは、週に数時間の授業ではつくれません。だからこそ、寝泊まりできる場所と、それを支える大人の人件費にお金を使いたい。

3. 空き店舗を、子どもの居場所にする
商店街を歩くと、シャッターの下りた店がいくつもあります。売れるまでの間、そこを子どもの居場所として開けたら、と考えています。
放課後にふらっと立ち寄れて、宿題をしたり、地域の大人と話したり、何かを始めたりできる場所です。課題は、雨漏りや散乱で、そのままでは使えない物件が多いこと。改修費があれば、眠っている空間を一気に子どもの場所へ変えられます。

4. 学生が小さな会社をたくさん起こせる環境をつくる
地域を元気にする特効薬は、外から大きな何かを呼んでくることではないと僕は思っています。地域の人、特に学生が、自分たちで小さな産業や小さな会社をたくさん起こすことです。
お金があったら、高校生・大学生向けの起業資金、試しに商売ができる場所、伴走する大人の仕組みを用意したい。失敗しても大丈夫な小さな挑戦を、田川のあちこちで同時に起こしたいのです。

5. 大人が学び続ける場をつくる
子どもは、周りの大人の姿から「当たり前」を吸い込みます。子どもだけを変えようとしても、家庭や地域の空気とぶつかって、なかなか届きません。
だから、大人向けの探究の場をつくりたい。先生、保護者、商店街の方、行政の方が、自分の問いを持って学ぶ場です。学校だけに教育を抱えさせない。地域の大人が学び続ける姿こそ、子どもにとって一番の教材になると思っています。

お金の話は、自己決定の話でもある
5つを並べてみて気づくのは、どれも「誰かに与えてもらう」のではなく、「自分たちで決めて、自分たちでつくる」話だということです。
実は、お金の出どころも同じだと思っています。行政の予算だけに頼る教育は、外からの判断に左右されます。
それは、子どもに「自分で決めよう」と言いながら、大人の側が決める力を手放している状態かもしれません。
だから僕は、田川教育振興財団の設立に向けて動き始めました。地域の人が、自分たちの意思で、自分たちの子どもに投資できる仕組みをつくるためです。
「お金があったら」は、待っていても来ません。ひとりひとりの小さな応援が集まったとき、はじめて「お金がある田川」になります。
この記事を読んで、ひとつでも「それ、見てみたい」と思ってもらえたら嬉しいです。