パレスチナ。最近はあまり大きなニュースに上がってこなくなってしまったかもしれません。しかし現地では、2023年10月7日のハマスによるイスラエル領土への越境攻撃(1200人が犠牲、250人が人質となりガザへ連行)を機に、今もあまりにも過酷な現実が続いています。イスラエルによる激しい攻撃の結果、ガザでは7万人以上が亡くなりました。そのほとんどが民間人と言われており、人道支援物資の搬入拒否による飢餓で、多くの方が餓死しています。
この3年間の凄惨な記録をしっかりと伝えていこうと有志が集まり、2026年10月6日(火)から12日(月)までの7日間、目黒区美術館区民ギャラリーにて「パレスチナのいま―ガザ、ヨルダン川西岸2023―26」を開催する運びとなりました。
そして展示期間中の夜には、区民ギャラリーから徒歩1分の「impact hub Tokyo」にて、10月7日・8日・9日の3日間にわたり「パレスチナの夜」というイベントを同時開催いたします。最終日となる10月9日(金)は、国際派音楽ユニットChalChal(チャルチャル)を迎え、パレスチナの美しい音楽を皆さまにお届けします。
皆さんは、パレスチナの音楽を聴いたことがありますか?
私、佐藤真紀は、1997年から2002年までNGOのスタッフとしてパレスチナで働いていました。ある日、ラマッラーの町を歩いていると、美しい歌声が小学校から漏れてきました。覗いてみると、パレスチナを代表する歌手リム・バンナが子どもたちのために歌っていたのです。彼女は抵抗詩を歌うと同時に、古い民謡をとても大切に歌っていました。その活動には、以下のような深い願いが込められていました。
- アイデンティティの保護: 故郷や文化を奪われ続けるなか、忘れ去られそうな古い民謡を記録することで、パレスチナ人の歴史と存在の証拠を残すこと。
- 人々をつなぐ連帯: 地理的・政治的に引き裂かれたパレスチナの人々を、共通のメロディによって壁を越えて一つに結びつけること。
- 抵抗メッセージの継承: 囚人への暗号などが隠された歴史ある民謡を歌い直すことで、弾圧に屈しないパレスチナの「不屈の精神」を次世代へ伝えること。
- 世界への発信: 伝統音楽を現代風に洗練させて世界に届けることで、政治ニュースとしてではなく「豊かな文化を持つ生身の人間」の物語として共感を広げること。

コンサートの様子

1999年、日本からジャズピアニストの河野康弘氏を招聘しエルサレムでコンサートを行った際、リム・バンナにもゲスト出演してもらいました。その時彼女が歌ってくれたのが、パレスチナ民謡の『ハラララライヤ』です。当時は暫定自治が終わり、パレスチナ独立のための最終交渉に入った頃で、人々が最も希望を感じていた時期だったかもしれません。しかし、その後交渉は決裂し、武力衝突へ。2002年に私も現地を去らざるを得なくなり、しばらくパレスチナから離れることになりました。その間、リム・バンナは2018年に51歳という若さでこの世を去りました。➡詳しくはこちら
2021年、私は再びパレスチナに関わる仕事を始めました。イスラエルとパレスチナの若者を交流させるプログラムです。コロナ禍が落ち着いた2023年、若者たちが日本へやってきました。この年はすでにヨルダン川西岸地区で200人以上が殺害されており、緊張が高まっていましたが、完全に封鎖されていたガザ側はむしろ平穏な空気すら漂っていました。オスロ合意から30年という節目もあり、参加者の若手ミュージシャンたちと「平和コンサート」を企画し、ChalChalにも演奏を依頼しました。しかし、結果としてパレスチナ側の若者たちからボイコットされてしまったのです。「平和とは到底言えないこの残酷な状況下で、平和コンサートには参加できない」という、彼らの切実な意思表示でした。結局、用意していた『ハラララライヤ』はChalChalとイスラエル人の若者たちで歌いました。その時の映像はこちら➡https://youtu.be/QbBU_tfPZ9Q?si=EtCC5kAUZ-lNKewC&t=4694
そのわずか1ヶ月後、またしてもガザ戦争が始まりました。
あの日、共に歌ってくれたイスラエル人ミュージシャン・アンディのお父さんは、2009年から毎週のように南ヘブロンのマサーフェル・ヤッタに通い、パレスチナ住民の支援を続けている人です。戦争が始まり、イスラエル社会がさらに排他的になり、西岸での暴力が激化する中でも、お父さんは活動を止めませんでした。私はお父さんを紹介してもらい、その支援活動に加わっています。
生前の坂本龍一氏は、自身のアルバム『Heart Beat』でアルジェリア系の歌手フーリア・アイシーが伝統的なアラブの歌(湾岸戦争の犠牲者へのレクイエム)を歌っていて、「真剣に伝統的なことやっている人って怖いくらいすごい。歌う時の手つきからして、もう入り込んじゃう。こっちは軽いノリでやっているから、どうしても負けちゃう」と語っていました。
ヨーロッパのミュージシャンのサウンドとセッションしながらも、伝統的なパレスチナ民謡を歌い続けたリム・バンナの姿に、その重要性が改めて重なります。
今回の「パレスチナの夜」では、ChalChalがパレスチナの歌に新しくチャレンジします。政治的なニュースの枠を超え、音楽を通して彼らの豊かな文化、そして生身の心に寄り添い、連帯できたら幸いです。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

また、アフタートークでは、ゲストに、長年イスラエルで踊り、パレスチナ難民の支援活動も行っているダンサーの今在家祐子さんをお迎えし、イスラエルの若者たちが今何を思っているのか、イスラエル、パレスチナから帰国したばかりの山村順子さんにも加わっていただき掘り下げます。
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10月9日(金)
18:30 開場
ChalChalによる「アラブ音楽コンサート」
今在家祐子+山村順子+佐藤真紀のトーク「イスラエルとパレスチナの文化」
チケット2000円
定員30名
別途1ドリンクオーダーをお願いします
申込みはこちら https://forms.gle/3xYc78KsmuHgYUTS7
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今在家祐子さん
劇団四季等を経てダンサーとしてイスラエルに長年滞在し、パレスチナ女性の支援活動やトラウマを負った兵士のセラピーなどに従事した経験を持つ
山村順子さん
民間企業等勤務を経て、エルサレムにNGO駐在員として5年間滞在し、パレスチナでのプロジェクトに従事。そののちパレスチナでのプロジェクトをきっかけに開発コンサルタント会社に勤務。現在は医療に関するボランティアとしてパレスチナに関わる。