10月23日(金)の共創ワークショップ、問い②は長崎県・高島から届いた「人口200人の島で、生活航路を守りながら、関係人口で来島を持続させるには?」です。
テーマオーナーは、長崎市地域おこし協力隊の池田美和子さん。約40年前、炭鉱閉山直前の高島で数年間を過ごし、2024年に協力隊として島に戻りました。
高島の人口は2026年5月末時点で215人。毎年約10%のペースで減少しています。一方、長崎港と島を結ぶ生活航路には年間約2億4,000万円(令和5年度実績)の赤字が生じており、国・長崎県・長崎市の公的支援で運航が支えられています。それでも年間5万人以上が海水浴やシュノーケリング、海釣りに訪れる島です。
池田さんが目指すのは「関係人口1,000人」。この数字は「笑顔で人があふれる島にしたい」「高島トマトやブリの美味しさを知ってもらいたい」という島の子どもたちの声から生まれたものです。
高島の「問い」の詳細 https://ritokei.com/forum/shimakaigi2026_theme02_takashima
リトケイはこれまで、離島航路の維持について専門家や現場の声を取材してきました。10月23日の議論を深めるために、アーカイブから4本の記事をご紹介します。
①【座談会】減便・廃業を避けるには? 航路を守る「アイデア」と「お金」

2026年2月に開催したオンライン座談会には、沖縄県座間味村の宮里哲村長、九州産業大学准教授の行平真也さん、株式会社エイトノットの木村裕人さん、日本財団の野本圭介さんが登壇しました。
行平さんによれば、全国276の離島航路のうち126航路が国庫補助の対象。共通する課題は人口減少で、それが利用者減少から経営悪化、減便・廃業の悪循環につながっています。特に深刻なのが船員不足です。
座談会では「アイデア」として3つの具体策が挙げられました。
- 母港変更:船員が島側に居住する課題に対し、母港を本土側にすることで改善する。三重県鳥羽市で2026年4月に実施予定
- 小型船舶化:九州では現在6航路が小型船舶に切り替わり、運営の効率化を目指している
- 共通予備船の建造:船が故障した際に予備船がない航路が増えており、福岡県では複数事業者が使用できる共通予備船の建造を計画
「お金」については、座間味村の実情が語られました。船舶更新費用は高速船(196トン・200名乗り)が8年前で11億5,000万円、フェリー(669トン・400名乗り)が10年前で18億5,000万円。この費用は「10年で1.5倍になっている」といいます。一般会計からの持ち出しは昨年約2億円。2025年1月からは運賃を約35%改定しました。
高島の議論に向けて:高島の赤字約2億4,000万円をどう軽くするかを考えるとき、母港変更・小型船舶化・共通予備船といった選択肢が実際に検討可能かどうかは、具体的な論点になりそうです。
▶ https://ritokei.com/campaign/searoute2025/discussion2
②【特別対談】航路DXは、小さな島の航路と相性が良い

行平さんと木村さんによる特別対談では、自律航行技術の可能性が語られました。
エイトノットの「AI CAPTAIN」は、木村さんいわく「カーナビ感覚で目的地を選ぶだけで、障害物や他船をセンサーで検出し、AIが航行中の危険を回避」するシステムです。既存の小型船への後付けが可能で、新船購入が不要なため「今ある船を活かせるので、小さな島の航路には相性が良い」と述べています。
広島県大崎上島町での実証実験(2025年1月〜3月)では、大崎上島町〜竹原市間の夜間・早朝の旅客輸送と、生野島への生協の宅配サービスを実施。島民からは「夜に仕事が遅くなっても助かり、出張予定も組みやすかった」という声が寄せられました。
木村さんは「陸上からのリモートモニタリングも可能なので、『陸の船長』が複数の船を安全管理するといったことも可能になる」とも語っています。
ただし課題もあります。木村さんは「恒久化に向けては乗務員2名分の人件費が大きいので、財源確保が課題になる」と指摘。行平さんは「全国的な船員不足の中では、財源が確保できても船員確保に至らない可能性があるため、別の工夫も必要」と補足し、地元漁師による輪番制の海上タクシーの例を紹介しました。
行平さんの総括はこうです。
島によって事情が異なるので、DXが役立つ島もあるし、そうでない島もある。先端技術も活用しながら、財政支援をより手厚くするなど、さまざまな施策を組み合わせ、総力戦で航路を維持していく必要がある。
高島の議論に向けて:長崎港から35分という距離、人口215人という規模で、どんな技術や運航形態がフィットするのか。「総力戦」の中身を、高島の条件に即して具体化することが問われます。
▶ https://ritokei.com/campaign/searoute2025/discussion
③【島×制度・法律】有人国境離島法による運賃低廉化

2017年に施行された有人国境離島法では、特定有人国境離島(8都道府県・71島)の住民を対象に、航路・航空路の運賃低廉化が実施されています。
運賃引き下げの目安は「船賃はJR運賃並み、航空運賃は新幹線並み」。平均引き下げ率はフェリーが40%、高速船が33%、ジェットフォイルが36%、航空機が35%です。農水産品(加工品を除く)の出荷・輸送費は最大8割が軽減されます。
なお、対象は住民であり、観光客は含まれません。この法律が島の人口減少抑制に重点を置き、住民の日常的な移動を支援することを目的としているためです。
記事では、人口減少抑制への効果は限定的で、他の支援制度との組み合わせが重要とされています。
高島の議論に向けて:高島は特定有人国境離島ではありませんが、「住民の足を守る制度」と「来島者を増やす取り組み」が別々に設計されている構造は共通しています。関係人口を増やすことが航路の収支にどう効くのか——制度の隙間を考える手がかりになります。
▶ https://ritokei.com/system/19784
④【特集】離れていてもつながりあえる「島想い」

『季刊ritokei』34号の特集では、島の住民・出身者・ゆかりの人が支え合うつながりのかたちが紹介されています。
たとえば鹿児島県・奄美群島。関東に約20万人、関西に約30万人ほどの縁故者がいるとされ、2018年に創設120年を迎えた郷友会「東京奄美会」では、約1,500人が集う総会や、群島出身アーティストによる芸能祭、島対抗運動会(いずれも隔年)が開催されています。そこでの縁から就職や結婚につながることもあり、豪雨災害時には義援金を集めて島へ寄付。青年部は観光物産PRや移住支援に力を注いでいます。
飲食店を拠点にしたつながりもあります。東京都世田谷区の酒屋を拠点とする「泡盛部」は、週に1回集い、1年かけて全蔵の泡盛を味わい、年に1度の合宿で蔵を巡る。訪問先は沖縄本島、久米島、伊是名島、伊平屋島、宮古島、石垣島に及びます。
島同士のつながりも紹介されています。瀬戸内海の若手世代が中心となる「瀬戸内横串サミット」、2020年5月に北海道から沖縄まで14島が参加した「zoomショッキング」など。
高島の議論に向けて:関係人口1,000人という目標を、どんなつながり方で積み上げるか。企業研修やワーケーション、教育旅行といった「来島」の形だけでなく、郷友会や飲食店、オンラインといった「離れていてもつながる」形も選択肢になります。
▶ https://ritokei.com/pickup/k34_12
10月23日、話してみたいこと
4本の記事から、ワークショップで深めたい論点が見えてきます。
- 航路のコスト構造をどう軽くするか:母港変更、小型船舶化、共通予備船。高島で現実的な選択肢はどれか
- 技術は高島に合うか:自律航行やリモートモニタリングは、長崎港から35分・人口215人という条件でどう効くか。人件費の課題をどう乗り越えるか
- 関係人口は航路の収支にどう効くのか:年間5万人の来島者を、どうすれば「支える人」に変えられるか
- 「来る」以外のつながり方:郷友会、オンライン、産品を通じた関係。高島にはどんな形がありうるか
- 子どもたちの「1,000人」を、どう数えるか:関係人口をどう定義し、何をもって達成とするか
池田さんは「高島のことを全く知らない方こそ参加してほしい」と語っています。外部の視点が、島の中では見落とされがちなヒントになるからです。
ワークショップへのご参加はこちらのサイト(Peatix)をご覧ください。
クラウドファンディングへのご支援をお願いします
「未来のシマ共創会議 2026」は今年で3回目。高島をはじめ6つの島々が「本気で解決したい問い」を携えて、10月23日に東京へ集まります。
この会議を実現するため、8月末までクラウドファンディングに挑戦しています。いただいた資金は、共創ワークショップの運営費、アーカイブ動画の制作費、成果をまとめた公式ブックの発行費などに使わせていただきます。1,500円からご支援いただけます。
島の航路を守ることは、島の暮らしを守ること。ぜひ、力をお貸しください。
👉 クラウドファンディングページ https://for-good.net/project/1004074
👉 共創ワークショップの詳細・申し込み https://ritokei.com/campaign/co-creation
👉 離島航路研究×航路DX 特設ページ https://ritokei.com/campaign/searoute2025